僕が冤罪で警察に捕まった話

わが国、日本では起訴され刑事裁判に掛けられると99.98%の確率で有罪となるらしい。つまり裁判に掛けられた時点で有罪が確定しているようなものだ。僕は今、その刑事裁判に掛けられている。先に言っておきたい。僕はやっていない。やっていないのだ。しかし、状況は非常にマズい。

 

僕に掛けられた容疑は「ダジャレ罪」である。

 

取り押さえられたワードは「邦画のほうが」である。思わず赤面した。全身から汗がほとばしった。動悸がした。マッドマックスについて「登場する自動車全てがもれなく車検に通らない説」を小粋に繰り広げていた先ほどまでの僕の見る影はなかった。「ほうがのほうが」わずか7文字の中でダジャレを披露してしまった。無駄がない。計画的犯行と思われても仕方がない。だが、それでも僕はやっていない。

 

普段はむしろ敏腕ダジャレ警察として活動している僕が、まさか冤罪で捕まるだなんて思いもしなかった。青天の霹靂である。なにしろこの悪夢のような日の前日は「サルが去る」という第1級ダジャレ罪を取り締まったばかりである。本来なら僕は勲章を貰えるはずだった。

 

もう一度言う。それでも僕はやってない。
とにかく抗議した。これは冤罪だ、おかしい、こんなベタなダジャレを言うわけがない!ダジャレ犯ならもっと上手くやっているはずだ!と。

そして思い出した。僕にはかつて「牛がぎゅうぎゅうに詰まって美味しい」という前科があったということを。その時も相手はこの刑事であった。しかし今回は違う、今回は作為ではない。僕は全身全霊を込めて抗議した。

 

「うん、別になんでもいいし、どんだけその話するの」

 

こうして僕は解放された。色とりどりの鶏でも食べよう。