練馬で完全に心臓がビート刻んでた
街中には人間がこんなにも溢れているのに孤独なのが僕だ。
僕が死んだら僕の魂はどこへ行って、世界はどうなるのだろう。
そうなると眠れない、という訳でもなくただただポケモンGOをするために今日も深夜1時に近所を散歩することにした。
ファミマでアイスカフェオレを買った。100均のイヤホンからは爆音で音楽。ポケモンGOをセットして歩く。散歩。
東京23区、練馬といえど深夜帯に路地を一本入ってしまえば誰もいない。閑散とした住宅地。左手にはカフェオレ、右手はリズム。それが僕のイズム、なんて調子は最高で超ノリノリで散歩していた。曲を口ずさみ、「お前のノリ方は体幹なさすぎて酔拳みたいだな」でお馴染みのノリというかダンスで右手は一人でプッチュヘンザップ。深夜1時に味わう万能感と開放感。
そしたらいた。完全にいた。
そこにヒップホップを体現したような男がいた。2人いた。目があった。誰も通らないだろう道の自販機の前にいた。自販機の前っていうか僕の位置は右手を伸ばせば「あったか〜い」のボタンは押せるくらいの距離だ。うっかり壁ドンしてしまう距離だ。
ああ、なるほど。
どんなのんきな動物でも2秒後には隣山まで逃げるシチュエーションだ。
想像してほしい、
「ヒップホップを体現したような男ってなーんだ?」と。
さて、想像できただろうか?
そう、ソレだ。
シャカシャカ音漏れしているこのファッキンイヤホンもこの際どうでもいい。ブルルと振動してポケモンが出現したことを知らせるこのファッキンポケモンGOもどうだっていい。どうせドードーだ。
問題は僕のシャカシャカ音漏れしたこのファッキンイヤホンから流れている音楽が
完全にバトルをかましそうなこの曲だということだ。
もっというと、僕とヒップホッパー風の2人組っていうか、もう2MCとエンカウントした時の僕の口ずさんでいた歌詞が
一人残らず一網打尽 ナーミーン?
ナーミーンの意味は分からなかったが、「こんばんは」ではないことくらいは分かる。
もしかしてフリースタイルがおっぱじまってしまうのか、と考えてしまったのは完全にフリースタイル動画の見過ぎなんだけども、少なくとも何かが始まることは確かだった。恋とかトキメキではない何かだ。血とかざわめきに近い何かだ。
とはいえ、僕も男だ。こんな時のための準備はできている。
深夜の散歩の時は財布を持ちあるかないようにしてるから小銭しかないし、全身はユニクロだ。身ぐるみは剥げない万全の策だ。
フリースタイルだって完璧だ。
中2の頃にはお母さんに相手に反抗期フリースタイルってか反抗期をぶつけていた。
「俺は東京生まれHIP HOP育ち 悪そうな奴は大体友達」がヒップホップのパンチラインなら
「俺はこの家生まれこの家育ち お母さん以外は家族」が僕のパンチラインだ。内弁系ヒップホップだ。こういう反抗期は大体あとで後悔する。
あーーーーーーー
あーーーーーーー
完全にこの2MCが僕になんか言ってる。絶対韻踏んでる。「カフェオレ」と「壁もねえ」で絶対韻踏んでる。
あーーーーーーー
僕の目見てなんかやってる。
あーーーーーーー
イヤホン外せ、のジェスチャーしてるーーーーーーーーーーー。
覚悟してイヤホンを外した。
2MCの1バース目だ。始まる、恋以外のバイオレンスが。そしたら
「いるよ?人」
だって。
知っとるわーーーーーーい。いない場合あるーーー?ある?なーーーいーーー?ナーミーン?
「あ、はい!ごめんなさい」
と言ってその場を後にした。無駄に心臓ばくばくした。
あーーー無駄に怖かった。あーー余裕だわーーー。
強いて言うなら2MCの前から一刻も早く姿を消そうと思って、目の前にあった路地に入ったから帰り道が分からなくて10分くらい迷子になってたことくらいだわーーー。
あ!ポケモンGOの地図みればいいじゃん!で帰れた。
ドードー3匹捕まえた。