僕がロリコンになるまでの3ステップ

ロリコンになった。24歳にしてロリコンになった。
たった3ステップ。30分の出来事だった。

 

後輩の女性から腸炎になったという報告を受けた。LINEでやり取りをしたので、はじめは「腸炎」を「陽炎」と見間違えてしまった。カゲロウ。「じつは私、陽炎になったんです」後輩がポエマーと化してしまったかと思った。それか達観の域に入った人かと思った。禅問答でも始まるのかと思った。とりあえず「そうなんだ、大変だね」とその日はそんなやり取りで終わった。

 

それから1週間ほど経ったので後輩に具合を尋ねた。後輩は、ほぼ回復している事、大変だった事を話してくれたのだが、最後に「心配してくれるなんて、良い人ですね」と言った。僕の中の何かのセンサーが引っかかった。なんだろう、これは詳しく聞かねばならぬという使命感に襲われた。「良い人ってどういう事?」「いえ、なんか良い意味ではクールだと思っていたので」「悪い意味では?」「人に無関心で自分だけの世界に閉じこもっている人だと思っていたので」後輩からの突然のダイレクトアタック。「無関心ではないし閉じこもってもいないよ」「いや、閉じこもってないとおかしいと思うんですよね…」引かない。媚びない。顧みない。大学時代、道を歩いていると3人組の男が前からやってきて誰1人として僕を避けてくれなかったので、仕方なく道の端に寄ったが、それでも3人が通れるスペースが無く、さらに端、さらに端に道を譲った結果、鉄格子のフェンスに頬を埋めるという忌まわしい過去を思い出した。冬の鉄格子は冷たい。

 

突然の後輩の引かない姿勢を見せつけられると、こうなったらもう冗談を言って場を和ませよう、回避しようという性分が出てくる。「やめて、泣きそう」「泣かないで、おじいちゃん」「おじいちゃんてなに。僕24だよ」「いえ、年上なのでおじいちゃんです」暴論も暴論である。「お兄ちゃんだよ、お兄ちゃんって呼んで良いよ。さん、はいっ」「おじいちゃん」「なんで、おかしいじゃない」「幼稚園の時、近所にやたらとお兄ちゃんって呼ばせようとする変態いたよね。あ、ロリコンだ。ロリコンだ」ついにロリコン扱いである。ロリコンついでに初老扱いである。「僕、ロリコンの初老なの?ねえ」「分かんないですけど、病気のこと心配してくれてありがとうございました。寝ます」寝た。一方的に寝た。その後「涙ふけよ」というスタンプが送られてきた。なんだったのだろう、この出来事は。まるで陽炎だった。

 

以下、ロリコンになるまでの3ステップである。

 

1. 後輩の病気を心配する

2. 自分の評価を思い切って聞いてみる

3. お兄ちゃんと呼ばせる